濱菊_瀬山

建物を設計しながら考えたことなど
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「Yビル/中山英之」感想
Yビル

先日、中山英之によって設計されたYビルの内覧会に参加することが出来たので、ここに感想を書いておきたいと思う。

まず、90角という細さの角パイプで構成された鉄骨造の建物で、真壁のおさまりを採用している建物を初めて見た。これは、かなり冒険的なおさまりだと思われるが、建物の中で見学している時は、少しでも床面積を増やすためにこのような方法を採用しているのかと思っていた。(同様に、外壁にアスロックではなくラムダを使っている理由も、そこにあるのだろうかと考えていた。)しかし、建物から外に出て、ふりかえってファサードを見た瞬間に、そんなところには大きな理由はなかったんだということに気がついた。

そこには、この言い方で合っているかわからないんだけれども、とにかく異様に透明なファサードが出現していた。(透明という言葉は、なんというか、「近代的」な建築言語の語彙なので、あまり使いたくないのですが、とはいえ他にうまい形容詞を思いつきませんでしたので、暫定的に、この言葉を使っておきたいと思います。)この建物のファサードには、壁を薄くするということが、建物の質を変えてしまうということが、非常によく現れていると思う。また、壁の薄さの他、製作したサッシ、柱の細さ、3角形の平面の頂点部分に柱がないことなども関係し合っているだろう。
壁を薄くするという方向性をつきつめた建物といえば、妹島和世による梅林の家や、西沢立衛による森山邸などが思いつくのだが、Yビルは、それらとはまた違った方向からアプローチしている。例えば、壁面の材料に鉄板を採用することで壁を薄くするという考え方からは、開口部は文字通り「壁に開けられた」すなわち、穴のようなものにならざるをえないと思われる。(壁面に対して、いかなる位置に、いかなる大きさの穴を開けるかということがスタディの対象となる。)

しかし、Yビルの開口部は、穴を開けるというよりも、端的に「壁のない部分」として作られている。そのため、ファサードは、窓の位置関係をスタディして獲得した構成的なものではなく、もっと、直裁的な建物についての操作と直結したものの結果として、事後的に現れているように見えるようにつくられている。だから人によっては、Yビルは、まったく普通の、どうってことない建物に見えてしまうこともあるのではなかろうか。しかし、もちろんそのファサードは事後的なものなどではなく、壁の厚み、柱の細さ、ブレースを入れないという構造、その他のあらゆる要素を周到に計算して事前に「設計」されたものであることがわかる。一階の床が仕上がったら、文字通り、各階の壁が宙に浮いているような見えかたをする建物になるだろう。(また、中山が「建築と日常」という雑誌で答えていたアンケートの意味を、この建物の完成した姿をみて具体的に理解できるかもしれない。)

ちなみに、Yビルのプランと構成は、あの敷地に対して適切なものになっていると思われるが、おそらく、あの敷地に対して適切なプランや構成は1つか2つしかないのだろう。だから、大きな意味でのプランニングについて試行錯誤したり、工夫したりする余地はあまりない、というか、あまり独自性を発揮しようとすると、かえって間違ってしまうような敷地にもみえた。だから、プランや構成を見るという立場から、Yビルを説明することはあまり意味がないように思えた。
| オープンハウス | 11:42 | comments(0) | trackbacks(0) |
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