濱菊_瀬山

建物を設計しながら考えたことなど
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googleのことなど その2

更新が遅くてすいません…今年はせめて月に一度程度のペースで更新できればと思っていたのですが、すでに二月も半ば…。なかなか余裕がありませんが、今年もよろしくお願いします。


前回のエントリの続き。googleのことを考えていて、私が委員の末席に座らせていただいている「世界のすまいかたフォーラム」でアニリール・セルカン氏を招いて話を伺った時のことを思い出していた。

セルカン氏(略歴はここを参照して下さい)の話は、最新のテクノロジーを用いて建築の姿を更新することを主眼としているもので、その内容は宇宙エレベーターと呼ばれるインフラの話から、身の回りの設備機器を制御する情報技術についてまで多岐にわたっていた。いずれもある種のSF的想像力(実際話の中でターミネーターやブレードランナーといった映画のスチール写真が用いられ、それらの技術と関連づけて説明されていた)から話が組み立てられ、文字通りの「夢にあふれている」ものであったと言える。

特に、前回のエントリと関係があるように思われたのは次のような話である。要約するとこうだ。「家の中に設備機器の情報を管理する基盤を導入する。その基盤では、電気の使用量や水道の使用量等を「目に見える形で」表示させることができる。この基盤を導入することで、水や電気といったエネルギーについての消費にかんするロスを劇的に減らすことが可能だろう。」すなわち、一回トイレを使用したときにどれだけの量の水が使用されているか?ということに人はそれほど意識的になって生活していないが、これを目に見える形で表示させるシステムを導入することで、人は生活の中で自分がどれだけの量のエネルギーを消費しているかを知ることになる。すると、それだけで自ずとそれらについての消費量が減るだけでなく、たとえばひと月あたりの目標数値を設定して、その目標を守るように消費量をコントロールするというようなことも容易になるというわけなのだった。

これはいってみれば、家という単位でレコーディングダイエットをするようなものである。このダイエット方法も、エネルギーに関する情報を記録するだけで驚くほどダイエットの効果が上がってしまうということを実証するものだった。実際、住宅についてこの情報管理システムが運用されている様を考えると、かなり効果的にエネルギーのロスをセーブできるものに感じられ、これが例えば数百万軒規模の住宅で実施されたときに減らせる「無駄な出費」の量を考えるとそれほど悪くないようにも思えるのである。

一方でこれが、次のようなサービスと提携するようになったらどうか。例えば風呂でシャワーを出しっぱなしにしたときに「使いすぎだよ」とモニタに警告が出るとか(というか、この程度だったらもう普通にありそうだけど)。あるいは「風呂に入った」ことに関する履歴が情報基盤にデータとして記録されることで、入らない日が続いたときに「もう4日も風呂に入っていませんよ」と警告が出るとか(笑)または、地域的に情報が管理され、毎月のエネルギー消費量が最も少なかった家が表彰されるとか…想像力をこのように使ったとたんに、それが、何かうんざりさせられるようなものであるように感じられてしまうのは私だけだろうか。

とはいえ、問題はこのうんざりさせられる想像にあるのではない。前回のgoogleに関するエントリと同じように、問題はこのシステムが住宅に実装されたときに、私(たち)が嬉々としてこのデータベースへと情報を提供し、自ら積極的にこのシステムの囚人になってしまうと思われることの方にある。それによって確かに生活は快適になるかもしれない。というか、エネルギーの消費を抑えるという点においてそのシステムは少なくとも社会的には「善い」ものなのだと思われる(それゆえ、皆積極的にコミットする)が、しかし私はこのシステムに対して違和感を消し去ることができない。この奇妙な違和感はどこからくるものなのだろうか。前回もまったく同じことを書いたが、これは「権力」という言葉が持つイメージと、そこで実際に作動しているシステムとの間のズレなのだろうと思う。


ちなみに、多くのSF映画においてこのようなシステムは必ずしも「善い」ものとして表象されてこなかった。「モダンタイムス」「メトロポリス」といった古典に始まり「未来世紀ブラジル」「トータルリコール」「マイノリティリポート」その他、あらゆるSF映画において、教訓的に語られてきたのは「テクノロジーの進歩は人間を必ずしも自由にしない」ということと「データベースを管理されることの恐怖」ということであったように思える。

…というわけで、suicaを使って改札を通り抜け、電車の中からiphoneでgoogleカレンダーにアクセスしつつ、このエントリを書いてみた。
| 建築計画 | 17:16 | comments(0) | trackbacks(0) |
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